オンリーワン企業や規模を追わない経営など、経営の在り方について様々な考えがあります。
そんな考え方の一つとして、この本の作者である塚越氏は、年輪経営というスタイルを提唱しています。
長野県の南部にある伊那地方の食品会社、伊那食品工業を少しずつ成長させてきた塚越氏の経営哲学について書かれた一冊について紹介していきましょう。
そもそも年輪経営とは何なのか?
年輪経営とは、一言で言えば低成長であっても毎年少しずつ規模を大きくする経営を言います。
規模を大きくするというと、いきなり東京の中心部にオフィスを構えたり、資金を調達して巨大な工場を建てたりといった極端なイメージがあります。
しかし、そう言った経営ではなく、前年に比べて少しずつ、しかも確実に改善していく経営を指します。
そんな経営を続けることで、増収増益という記録を何十年も続けてきたのが塚越氏の手腕です。
確かに極端な成長はしていませんが、気づいたら社長就任時の頃よりも遥かに巨大な企業として成長していたというのが塚越氏の経営する伊那食品工業です。
調子のいい時こそが落とし穴
伊那食品工業は、寒天と呼ばれるゼリーのもとや羊かんの原料になる食品を製造しています。
一時期、寒天ブームと呼ばれる一大ブームが起こり、同業の寒天メーカーを含めて、大きな需要が起こりました。
しかし、この時もかたくなに低成長を求め、事業拡大をいたずらに行うことなく規模を維持しました。
結果、ブームがすぐに去って、過剰な投資をした同業のメーカーの多くは深刻な経営上のダメージを負ったそうです。
好機であってもいたずらに利益を追わない姿勢も重要です。
いい会社を目指しましょう
伊那食品工業はいい会社であることを目指しています。
社会にとっても従業員の態度やスポンサーなどでいい会社であり、従業員にとっても待遇面や安全面でいい会社、そして取引先であっても取引先に有利な取引をさせるいい会社であるということです。
メセナ活動に奉仕活動、社員の働きやすさの追求のほか、取引先にも可能な限り良い条件での取引(可能な限り原料を一般的な相場より割増しで購入する)を行っています。
まとめ
伊那食品工業は、現在寒天原料を食品メーカーに提供する以外にも素材産業として、工業や科学実験などの素材の提供を行っています。
当初は、家内工業のように職人や塚越氏本人が寒天の原料である天草を煮たりしていたそうですが、現在は機械化によって過酷で危険な寒天製造のではなくなっています。
伊那食品工業は、全国的に知名度の高い会社とは言えませんが、こうした地道な活動で、年輪のように成長し、やがて大樹となる可能性を秘めているでしょう。